叶うなら、彼らに永遠の◯◯を

ジャニーズアイドル NEWSが大好きな飲酒プレイヤー

浜崎あゆみの暴露本が最高のエンタメ音楽劇だという話。

正直に言って、ゴシップ記事の延長のつもりで購入した。

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冒頭数ページは年長者が執筆したテキスト特有の読みヅラさがあり、それこそ彼女がデビューした頃に台頭していた某魔法の島を思わせた。

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Deep Love懐かしすぎん?今もコミカライズの新刊出続けてるって知ってた?

 

勢いではあったが、買ってしまった者として責任を持って読み切ろう。

そんな決意があったので、古臭い言い回しや過剰にロマンチックな比喩表現にツルツルと目を滑らせながらも読み進める。

 

物語は、浜崎あゆみ視点で綴られる。現在(厳密にいうとおそらく2017年初秋頃)ベースで二年前(2015年頃、彼女が活動の拠点を再び日本へ戻した当時)を振り返る序章。

前述したような読みヅラさと、なんとも言えない“ダサさ”を絶妙に織り交ぜながら綴られるところによると、ひととき恋愛関係にあったmax matsuuraこと松浦勝人氏(現エイベックス株式会社代表取締役会長CEO)が、デビュー直後の数年間ぶりに再び浜崎あゆみのサポートをすることになり、それについて彼女が非常に励まされている、という。

 

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あれ、マックス松浦って既婚者じゃなかった?

kindleを閉じて検索すると、やはり既婚者。しかも3人もの子宝にも恵まれ、現在は海外に拠点を構えているという。

 

オーケーオーケー。ゴシップは大きいに越したことない。過去の色恋沙汰だけじゃなくて、現在進行形でもカンケイがあると暴露してくれるのね、あゆ、その心意気、嫌いじゃない。

 

すっかり週刊誌でも読むような気構えで読み続ける。

年寄り臭いテキストの中において、唯一キラリと光るのはやはり彼女の詞。序章の中で紹介されるのは2018年リリースのアルバム『TROUBLE』収録楽曲『aeternal』の歌詞だ。

 

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どれだけ時間が過ぎても忘れられないよ
君との毎日それだけが全てだったよ

出会ったあの頃の2人
まだ子供すぎて 傷つけて
それさえ全て 仕方ないと諦めたね

いつまでもいつまでも君は
側にいると思っていた
くりかえしくりかえし
呟いてる君の名を
最後に見た寂しげな君の
横顔が焼きついている
ねえどうしてバカだねって
笑い合えなかったんだろう

君との思い出なんて消えてしまえばいい

なんて思ったこと
何でなの一度もないまま
時間だけ通り過ぎるよ 2人を追い越す様に

 

申し訳ないのだが、浜崎あゆみの音楽から離れて久しい私はこの曲を知らなかった。居ても立っても居られず、動画サイトで検索して視聴する。

そして、衝撃を受ける。

こんなにも、赤裸々な歌詞を堂々と歌いあげていることに。あの頃、フィクションだと信じて疑わなかった彼女の言葉たちが、私たちの想像をはるかに上回るピュアさでノンフィクションだったことに。

 

と、序章で興味をそそられたのもつかの間、第一章は我慢の章である。

ストーリーは浜崎あゆみの女優時代を描く。

地元の福岡でスカウトされ、15歳で上京してきた彼女は浜崎くるみの芸名で女優としてデビューする。ドラマへの出演や水着グラビアの撮影などをこなしながら堀越学園に通う毎日と、そこで出会った親友メイと六本木ヴェルファーレに通う中で松浦氏と出会う流れが綴られるが、ま〜〜あ退屈な文章で困った。

我慢を重ねながら気付けば第一章は終わり、浜崎あゆみはエイベックスに誘われていた。

 

私が死ぬほど疲れていたら、ここで寝ていたと思う。しかしながら、死ぬほどは疲れていなかった。その結果、第二章を読み始め、最終的に早朝ものすごい筆圧でブログを書くはめになっている。

そのくらい、第二章からの怒涛の展開は凄まじい求心力だった。

 

エイベックスから歌手デビューさせることを約束した松浦氏は、彼女をニューヨークへと旅立たせる。現地コーディネーターへの紹介もそこそこに、たった一人のホテル生活を強いられたあゆは、三ヶ月もの期間ボイトレ、ステージパフォーマンスのレッスンに勤しむ。

そんな心細い日々の中において、彼女を奮い立たせたのは他でもない松浦氏への恋心。

何も持たない小娘の自分と、十五も歳上の国民的ヒットメーカー。それも既婚者とあっては不釣り合いどころの話ではない。そうと知りつつも、自分にだけは正直でいようと決めたあゆ。

 

恋心を自覚してからの物語はあまりにもリアルで、浜崎あゆみという歌姫が私たちと同じように十代を過ごしたことを証明してくる。

 

帰国後、数ヶ月先のデビュー日を設定され、それに向けた候補楽曲のテープを渡されたあゆは、作詞という課題を与えられる。

それまで、作詞の勉強はおろか芸能活動の中であっさりと高校を中退していた彼女は国語の勉強すらそこまででストップしている。それでもなんとか、周りのスタッフの働きに報いよう、松浦氏の期待に応えようと、絞り出した詞は、松浦氏に本当の自分の心を知ってもらおうと綴られた、手紙だった。

そしてそれは、かの名曲『A song for ××』となって、後に世に出る。

 

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どうして泣いているの
どうして迷ってるの
どうして立ち止まるの
ねえ教えて
いつから大人になる
いつまで子供でいいの
どこから走ってきて
ねえどこまで走るの

居場所がなかった 見つからなかった
未来には期待出来るのか分からずに

いつも強い子だねって言われ続けてた
泣かないで偉いねって褒められたりしていたよ
そんな言葉ひとつも望んでなかった
だから解らないフリをしていた

 

あゆの作詞の才能に気付いた松浦氏は、どんどん書くようにと伝える。褒められたことで「こんな自分も役立てる」と喜びを溢れさせた彼女は、次々と詞を書き、そのどれもが歌詞という名のラブレターだった。

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『poker face』

いつだって泣く位簡単だけど 笑っていたい
強がってたら優しささえ
忘れちゃうから素直になりたい
あなたの愛が欲しいよ

人はみんないつだって
ひとりぼっちな生きモノ
だからそう誰かが必要
支えられたくて支えていたくて
確かなモノは何もないけれど
信じてる心がある

大切なモノひとつみつけられたら守り通そう
高すぎるカベぶつかったら
キズを負ったらまた立てばいい
他には何も望まないから
たったひとつそれだけでいい
あなたの愛が欲しいよ

 

ここまで来たらもうページをめくるタップを止めることはほとんどない……と、言いたいところだが、逆なのだ。

次々と繰り出される楽曲の話題に、どうしてもその頃の映像が観たくなってしまう。

そして、某動画サイトを検索しては当時のMV、番組歌唱をチェック。多角的に気分を盛り上げながら再びページを繰る。

ーーと、読了しているのだ。

 

本書の展開は、たった数年間の彼女たちの恋愛の始まりと終わり。そして、現在の二人の関係を淡く示唆して締めくくられる。

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松浦氏のtwitterより

 

巻末、浜崎あゆみからのコメントとして、この物語は事実を基にしたフィクションだと断りが入れられるが、そのメッセージの末尾に添えられるのは「自分の身を滅ぼすほど、ひとりの男性を愛しました」という紛れも無い彼女本人の、真実の言葉だ。

結局、どこからどこまでが事実かなんて、答え合わせは一生ないのだろう。しかし、どれもこれもが真実味を帯びてしまうのは、私たちが見てきた浜崎あゆみという歌姫の20年間にふさわしい物語だったからかもしれない。

 

中盤、松浦氏との関係に終わりを見たときのテレビ出演で、生放送中の歌唱にも関わらず泣き出してしまったエピソードが語られる。

動画サイトでその映像を見たとき、私は嗚咽を漏らして号泣してしまった。

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当時色々な憶測を呼んだらしいが、真実は誰にも当てられなかったと書いてある。まるで喉の不調を隠すように小さな咳を作り、笑顔で「(ゴメン)」とカメラ目線を送る彼女は、二十歳そこそこの女の子が背負うには大きすぎる秘密に押し潰されそうで。

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また、この時彼女が歌えなくなるとすぐに客席から大合唱が起こる。どういうわけか私は客席の大合唱にとてつもなく弱い。

 

それでもここまで必死になって“浜崎あゆみ”を続けてきた、生きてきた彼女だからこそ、今、この物語を世に送り出す理由に納得できた。

 

これは、「ミュージカル 浜崎あゆみ」とでもいうべき作品だ。新時代の音楽シーンを猛スピードで築き上げ、駆け抜けた歌姫のデビューと、密かに育まれた愛。そして、その愛を胸に秘めた浜崎あゆみの20年間にも渡る孤独な戦いを、見事にエンターテインメントへと昇華した極上の音楽劇。

贅沢を言えば、もっと年相応のベテラン作家に描き上げていただくか、もっと大手のベテラン編集者にしっかり校正して欲しかったけれど。

それでも浜崎あゆみ世代の女性たちに声を大にしておススメしたい!!!

 

そんな想いで3500文字オーバーのブログを書いてしまいました。

 

歌姫あゆバンザイ。